分科会

本会議において活動の中心となる分科会は7つ設けられており、日米各4名の参加者が議論を重ねます。事前活動では自主的に定期ミーティングを開き議論を重ねるほか、各自の興味に沿い、その分野の第一線で活躍されている方々のもとを訪ねます。本会議中もフィールドトリップで関連機関や専門家を訪問するなど、議論の質の向上を目指す努力が続けられます。以下が第74回日米学生会議における7つの分科会テーマです。

技術革新と遺産 ~グローバル・コモンズと21世紀の技術発展のあり方~ Tech Advancements and Heritage: The Global Commons and Preservation in the 21st Century

現代はデータが戦略的インフラ化し、AIが囲碁の世界チャンピオンを破る時代である。5G、AIなど情報技術の指数関数的発達は、知的生産のあり方までをも変えつつある。一方で人間の安全保障とは、グローバルな脅威からの人々の保護を謳う概念である。産業革命、IT革命以来のパラダイムシフトに人類が直面する現在、技術と規範の交差領域で生じる問題は枚挙にいとまがない。例としてビッグデータの中央集権化、多様なサイバー攻撃、災害対応でのAI活用が挙げられる。情報技術の発展と人権保護は両立されるのか?急速な情報技術発展の基盤となる法整備をいかに進めていくのか?国際社会、政府、企業、市民社会、個人はこの社会変革にどう寄与するのか?AI-データ技術新時代における人類社会の変化と必要となる打ち手について、議論と提言を試みる。

教育とメディア 〜社会教育におけるメディアの価値と役割〜 Education and Media: How Media Communication Affects Social Learning

メディアは教育にどのように関わっているのだろうか。テレビ、映画、音楽、雑誌、本、ソーシャルメディアなどを、私たちは毎日当たり前のように利用する。これらは今や社会生活の重要な一部となった。また教育とは、学校内に限らず、家庭や地域などあらゆる場所で生涯にわたって続き、私たちの行動やアイデンティティに影響を与えるものだ。共同体の歴史への認識も、メディアによって簡単に変化してしまうかもしれない。当分科会では、子どもから大人までの各世代の学びを広く「教育」と捉え、あらゆるメディアが現代の教育の及ぼす影響、これからのメディアを通した教育のあり方を探る。

タブー ~アルコール、ドラッグ、セックス、その他”悪”へのメタ認知~ Taboo: Analyzing Stigma of Alcohol, Drugs, Sex, and other Vice 

アルコール、麻薬、セックス、賭博、刺青。世の中には、社会的に禁忌、すなわち「タブー」として認知されやすい事柄が数多く存在する。これらタブーは一般的に「悪」とされていながら、そこにある種の快感を見出す人もいる。また、どれほど「悪」とされているかもコミュニティごとで異なる。この違いは何なのか?タブーとされることは、実際に「悪」なのか?いつから「悪」と認知されているのか?当分科会では人間行動学、政治学、社会学、心理学、人類学、歴史学、犯罪学などの多様な学問領域を通して、タブーの歴史や文化における違い、政治的背景など考察する。現代社会の重要な一部であるにも関わらず日常生活で避けられているからこそ、タブーの本質の解明を試みる。

ビジネスと社会変革 〜ウェルビーイング向上における企業の存在意義〜 Business and Social Innovation: Re-envisioning organization for our well-being 

企業は天使にでも悪魔にでもなり得る。人間社会や自然環境のWell-Beingの向上に貢献する企業も存在する。その一方で倫理に欠けた事業によって富を築く企業も存在する。しかし様々なステークホルダーから持続可能性への期待や圧力が高まる現代のビジネス環境では、社会貢献度が極めて重要になっている。そんな環境下でも、非倫理的な企業活動は利益追求において合理的なのか?それとも地球という共同体のWell-Beingの向上に寄与しつつ、利益追求を実行することが可能なのか?当分科会では様々な産業を議論の対象として、社会変革と利益追求の両立の実行可能性を模索する。更に社会問題の観点からも、各産業がどのようなアプローチができるか、そしてどのようにしてソーシャルビジネスを創出できるかを探る。

グローバル・ガバナンスと国家主権 ~国際社会を国際機関と国内政治から理解する~ Global governance and national sovereignty: Understanding IR through the lens of international institutions and domestic politics

なぜ中国は南シナ海の領有権にこだわるのか?トランプ政権時にアメリカがパリ協定が離脱した一方で、なぜ中国はよりアクティブな姿勢を見せたのか?なぜコロナ禍においても国際協調の動きは少ないのか?これらの問いは、従来のように「国家」の関係や動機を見るだけでは十分な理解を得ることはできない。変化する現状の中で、国際問題の解決について考えるのであれば、国家を単一のアクターとして捉えるのではなく、その行動は国際的規範と国内政治の両方に大きく影響されていると理解する必要がある。そこで、本分科会では、国際的なイシューを国際機関と国内政治の両観点から分析し、国益とグローバルアジェンダがどこで合致するのか、あるいは乖離するのかを探ることを目的とする。上述の問いのみならず安全保障、気候変動、貿易など、日米に関連する様々な問題を上述の観点から議論していく。

社会正義と文化多様性 〜現代社会における平和構築〜 Social Justice and Cultural Identity: Peace Building in Our Modern World

人はなぜ正義のために立ち上がるのだろう。不条理な主義主張に抑圧されたひとりひとりの声はやがて集まり力を持ち、大きな社会運動の渦を創り出す。しかし人々の主張はSNS上において一時の「流行り」の話題として取り上げられることも多い。私たちは本当に彼らの声に耳を傾け、その思想を真に理解していると言えるのだろうか。本分科会では、先住民族の権利獲得、LGBTQ+コミュニティ、BLM運動など社会的ムーブメントをテーマに、個人の意思が紆余曲折を経て社会全体に反映されてゆくまでのプロセスを、運動を促した歴史的背景、それに伴って活発になった芸術活動、固有の宗教や慣習に着目しながら考察する。また日米双方の参加者は議論を通して、人々が自らの正義を主張しあう現代社会における平和構築の術を模索する。

未来予測 〜データとモデルから見る個人と社会~ Micro and Macro Predictions of the Future: Utilising Data and Models 

当分科会では参加者が理論的・実証的に行った未来予測を持ち寄り、分析手法も含めて議論する。ナイル川の氾濫時期を予測するために天文学が発展したことが有名であるように、未来予測は人々の生活を改善するために古来人類が活用してきた技術である。現代において国際社会の勢力図を予測することは将来的に国民の便益を最大化する政策づくりに繋がる。同様に、技術革新の起こる産業を予測することは社会の発展に最も貢献する投資に繋がる。以上のように、当分科会は近年主流になりつつあるエビデンスに基づいた戦略策定に関して日米の若い知恵を結集して議論する。ここでの活動は参加者に未来のリーダーとしての素養を提供すると「予測」する。