本会議において活動の中心となる分科会は7つ設けられており、日米各4名の参加者が議論を重ねます。事前活動では自主的に定期ミーティングを開き議論を重ねるほか、各自の興味に沿い、その分野の第一線で活躍されている方々のもとを訪ねます。本会議中もフィールドトリップで関連機関や専門家を訪問するなど、議論の質の向上を目指す努力が続けられます。以下が第76回日米学生会議における7つの分科会テーマです。
グローバル経済のもとで、企業活動は国境を越えて展開されるようになり、企業の国籍は無意味化した。こうした流れの中で、国民国家では解決できなかった人類に共通する課題の解決主体として、企業価値のために合理的な経営行動をとる企業への期待が高まっている。しかし、それらは利益追求型ビジネスの域を出ていない。そこで本分科会では、既存の枠組みにとらわれず社会に蔓延る理不尽の解消を目的として業を起こす社会起業家の姿を日米の社会起業家のケーススタディを通して検討する。企業として持続可能な利益を上げることと、人々や環境に対する支援をどのように両立するのか、なぜ起業による変革なのか、日米から世界へ目を向けつつ、ともに議論し、探究する者を歓迎する。
技術革新に伴うデジタルプラットフォームの台頭により、芸術のフィールドは爆発的に広がった。今日、インターネットを通じ、かつてないほどに情報世界に露出されている我々はインフルエンサーという新しい肩書を得たアーティストと日々対峙している。 文化、芸術、テクノロジーの融合はトレンド分析を加速させ、人々の行動に影響を及ぼすまでに至った。技術の進化によって文化や芸術の生まれ方や提供のされ方も変わった今、それらは我々にどのような影響を及ぼすのだろうか。また、これらの共有されたデジタル空間は日米関係において新たな文化交流、技術革新、そして国家間の絆を強化する道を見出すツールとなり得るのだろうか。
中国や北朝鮮といった東アジアにおける権威主義国家は、領域問題やミサイル問題など様々な問題を引き起こし、近隣諸国との軋轢を生んでいる。これに対し、日本とアメリカは強固な関係を築き、両国を牽制して新冷戦と呼ばれる構図が形成されている。欧州もインド太平洋戦略の名の下、台湾や朝鮮半島といった問題のある東アジアに関与する姿勢を強めている。一方、第三極として成長著しい東南アジアは、両陣営から適度に距離をとる漁夫の利戦略を企図している。以上の背景を踏まえ、本分科会では、現在最も重要な二国間関係のひとつである日米関係と東アジアの関係を再検討し、東アジアにおける日米関係の理想と現実的な施策について議論する。
表現において自己の中にある意図全てを他者に伝えることは出来ない。さらに言語の違い、法律、フレームワークといった様々な規制を得て表現は変容する。本分科会では、人間によるあらゆる表現及び、それに伴う規制の存在に注目し、議論を構築する。日常「会話」により生まれる疑問、表現の自由の存在、芸術や言語の違いから日米の表現方法の違い、人間による表現の潜在的動機。知識、経験、考え方、全てを議論において等価値の要素と認識し、特異な環境・経験の中で、多様な価値観をもとに幅広く「表現」を捉え、議題を見つけ、深く思考し、またそれを表現し、己の表現の変容・誕生を楽しむ者を歓迎する。
パリ協定以降、各国は経済界の脱炭素潮流に後押しされ、CN宣言・ESG投資支援拡充を行い、日本も再エネ・省エネ・原子力等を中心に脱炭素を推進している。一方、依然世界は化石燃料に依存し、2050年CN実現は見通せない。バイオマスや核融合等の技術は経済合理的な段階になく、炭素税やLNGシフト等は南北問題を顕在化させている。
日本社会は、「最も成功した社会主義国家」と形容されたが、平成以降、急速に現下の変動性・不確実性著しい生の資本主義に翻弄され、苦境にある。本分科会は、環境・エネルギーをテーマに、国際政治・科学技術・市場動向等の観点から現状を十分に分析し、資本主義的な 政治・経済の見方を養うことを目指す。
「健康で文化的な最低限度の生活」が意味するものは、環境によって大きく異なる。本分科会では、個人・集団のウェルビーイングと私達が下す選択、行動、政策を導く倫理観の関係を多面的に探究していく。具体的には、医療・経済・社会的正義・持続可能性・動物愛護など人間のみに限定されない様々な角度から「福祉」とその背景にある「倫理」的枠組みについて掘り下げ、議論を行うことが想定される。あらゆる角度からインプットしたのちに、最終的には現代社会が直面している問題に立ち向かい得る策をアウトプットできることを期待する。また、机上の空論で完結しない白熱した議論を作り上げられる参加者を歓迎する。
個人の思考、感情、行動は社会によってどう影響を受けているのだろうか。また、個人は社会にどう影響を与えられるのだろうか。本分科会ではこの問いを軸に人間の内発的変化と社会の変化による外発的影響の対比から、個人が社会でどのような役割を担っているのかを様々なケーススタディを通して検討する。想定されるトピックには政治的観点から日米の市民活動やプロテスト文化の違い、社会心理的観点から社会的容認と個人のニーズの衝突、歴史的観点から巣鴨プリズンやアメリカの日本人収容所などを取り上げ、文化的観点から言語の基盤の違いを考察する。これらの観点を学際的にインプットした上で、独創的かつ質の高い議論をアウトプットする。